クライアントの方とは、「意図的な協働関係」(コーアクティブ・コーチング©︎)を築くために、お互いにどのような姿勢でセッションに臨むかを、折に触れて確認しています。
先日、しばらく休憩期間を取られていた方と久しぶりにセッションを再開したときのこと。
この意図的な協働関係を築くところから再開しようと思い、私からは、
「傷つくかもしれないけれども、厳しいことも言っていこうと思う。それが過ぎるようだったら教えてほしい。」
と表明しました。
そう表明したのには、背景があります。
コーチングが完了したクライアントの方々には、一連のコーチング・セッションを総まとめした振り返りとともに、コーチである私の関わりについても、アンケートにご協力頂いています。
その中で、こんな言葉を頂いていました。
「厳しい言葉は、もっと厳しく伝えていただくことがあっても良い」
「しかる等、もう少し厳しさがあっても良いかもしれない」
「多少雰囲気や居心地が悪くなっても、正直に思ったことを伝えて頂いて問題ないですよ」
「もっと踏み込んでコメントしてくれたらもっと良かった」
お一人ではなく、似たようなコメントを複数頂くということは、私も自分の関わり方を変えてみた方が良いなと思って、今回、その表明をしました。
そうしたら、そのクライアントさんは、こんな風に言ってくれました。
「是非、そうしてほしい。会社でも本当に厳しいことは、なかなか言ってもらえない。それは、究極の無関心だと思う。
利害関係のないコーチングなのだからこそ、なおさら、厳しく言ってほしい。」
自分の怖れがコーチングを邪魔する
この言葉を聞いて、私が自分の怖れに囚われていたことを気づかせて頂きました。
というのも、私は、もともと、かなり本質的なことを、相手の立場や場所をわきまえずにズバリと言ってしまうタチで、それによってこれまで人に不快な気持ちを感じさせたり、傷つけたりしたことがあると思っています。普通にしていても、もともと結構鋭いインパクトがあると思っています。
また、そういう言動や態度のせいで「人の気持ちも配慮せずにズカズカ踏み込んでくる人」「切り込んでくる人」「ドライな人」と思われたり言われたりして、不本意な思いをしたり傷ついたりしたこともあります。
もうそんな風には思われたくないから、言葉や表現にはとても気をつける。
クライアントに対して常に誠実かつ正直でいることは、コーチングを始めてから揺らいだことはありませんが、クライアントは自分にとってのお客様でもあります。傷ついてしまうかもしれないことを言わざるを得ない時は、ためらいが生じたり、オブラートにも包むことは、起きていました。
「厳しい人」「クールな人」というのも、人によっては褒め言葉と感じるかもしれないですが、その言葉は十分浴びてきた私は、それよりは「優しい人」と思われたいと思っていました。
結局のところ、自分がどう思われたいか、思われたくないか。
けれども、そんなことのためにコーチング・セッションを犠牲にするのは、もう本末転倒。
自分がどう見られるかというよりも、セッションでベストを尽くしたい。
クライアントの方々からのアンケートとこの日の直接の声は、私の、本質を見抜く目と耳と、それを突く核心の力、そして直感は、むしろ、コーチとしては素晴らしいリソースなのだと、改めて気づかせてくれました。
そういう意味では、本当にこれは私の天職だとも感じます。
昔の自分と今の自分について違うところがあるとすれば、その言葉がどこから出ているのか、ということ。
昔の私は、自分の方が正しいことを相手に分からせよう、相手をやり込めよう、というところから、そういう発言をしていたと思います。相手に勝とうとしていた。
今、特にコーチとしての自分は、クライアントの方の覚醒と、囚われからの解放と成長と、味わい深い人生を心から願っている。
きっとその違いは、言葉の受け手には伝わるのだと思います。
別のクライアントから頂いた私についてのこのフィードバックは、私にとってはとても嬉しい認知でした。
「優しい(実は。でもセッション中は厳しい。)」
クライアントの強さを信じる
そして、私はクライアントの強さをどこまで信じていただろうか、とも自問します。
「これを言ったら傷つくかもしれない」、と言葉を選び直したことは幾度もあります。
たかだかの私の言葉ごときで傷ついてしまうかもしれないと、私の方で勝手に調整していたということ。
けれども、振り返ってみれば、実際には、私が無意識にポロっと言ってしまったズバリという言葉こそが、クライアントにとってものすごく大きな気づきになっていたり、シフトするきっかけになっていました。
コーアクティブ・コーチングの肝心要の礎。
「人はもともと想像力と才知に溢れ、欠けるところのない存在」です(NCRW©︎)。
私の言葉がグサリと刺さっても、立ち直ることができるし、むしろそれを糧とすることができる。
私の関わりで、それは求めていないと思うことがあれば、それを教えてくれる勇気のある人たちです。
本当にそうなのです。
だから私も私の持っているリソースを全て使って、100%で関わっていこう、と改めて思う日でした。
踏み込む、踏み込んでもらう。
こんな風に、お互いの在り方や関わりあい方を相互に確認しながらデザインしていくことができるコーチングの関係性って、本当に面白くて尊いものだなぁとも思いました。
本当は、会社や学校も、こういう場であるはずなんだけどなぁ、とも。
(守秘義務についての注意事項:クライアントの方々のコメントは、第三者に開示することに許可を頂いています。)